『今昔物語集』は芥川龍之介の小説や黒澤明の映画の原案となった日本が世界に誇る文学作品です。成立はおよそ1000年前。 アメリカは建国してまだ250年経っていませんからこの作品がいかに貴重なものかわかります。 まさに国の宝というべき文学作品ですが、誰…
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巻5第3話 国王為盗人被盗夜光玉語 第三 今は昔、天竺にある国がありました。その国の王はこの世にふたつとない宝とされる夜光の玉を持っていました。それを蔵に納めておいたところ、泥棒がどうやってか入り込んでそれを盗んでしまいました。 国王はそれを嘆…
巻1第1話 釈迦如来人界宿給語 第一 今は昔、釈迦如来がまだ仏になっていないころは、釈迦菩薩といって、兜率天(とそつてん)の内院というところに住んでいました。 「閻浮提(人間界)に生まれよう」と考えはじめたとき、五衰が現れはじめました。五衰とは…
巻4第37話 執師子国渚寄大魚語 第卅七 今は昔、天竺の執師子国の西南、目がとどく範囲に、絶海の孤島がありました。500余の家が漁をして生活しており、仏法を知らなかったといいます。 あるとき、島に数千の大魚がやってきました。島の人はこれを見てたいそ…
巻5第12話 五百皇子国王御行皆忽出家語 第十二 今は昔、天竺に国王がありました。五百人の皇子を持っていました。 あるときの行幸のことです。国王は五百人の皇子を前に立たせて進んでいくと、たまたま一人の比丘(僧侶)が、琴を弾きながら皇子たちの行く先…
巻4第36話 天竺安息国鸚鵡鳥語 第卅六 今は昔、天竺の安息国の人は仏法を知りませんでした。 この国に鸚鵡(オウム)という鳥が飛んできました。黄金の色をしていて、白いところや青いところもある美しい鳥です。しかも、この鳥は人間のようにものを話したの…
巻4第35話 仏御弟子値田打翁語 第卅五 今は昔、天竺。仏の御弟子である一人の比丘(僧侶)が歩いていました。老人と若い男がふたり、荒地を耕しています。 比丘が「田を作っているのだろう」と思っていると、若い男が急に倒れ、死にました。老人はこれを見ま…
『今昔物語集』が書かれた時期は、貨幣経済がほとんどなかった時代です。このテーマは歴史学者・網野善彦の著書にくりかえし出てきます。 じゃあ下の話はどう説明つけんのさと食ってかかりたくなりますが、当時は文盲率が驚くほど高かったですから、これは字…
巻5第2話 国王狩鹿入山娘被取師子語 第二 今は昔、天竺にある国がありました。その国の王は山へ行き、人を使ってほら貝を吹かせたり鼓を鳴らしたりと山間に入らせて鹿を脅かして追いたて、そのように楽しむことがありました。さて、その王にはそれは大事に…
巻4第34話 天竺人兄弟持金通山語 第卅四 今は昔、天竺に兄弟がありました。ともに旅をするうち、それぞれが千両の金を得ました。 山々を通っていくうち、兄は思いました。「弟を殺し、千両の金を奪って、私の千両に加えれば、二千両になる」 また、弟はこう…
巻4第33話 天竺長者婆羅門牛突語 第卅三 今は昔、天竺に長者とバラモンがありました。千両をかけて牛を闘わせていました。日を決めて、それぞれが一頭ずつ牛を出し、闘う様子を眺めるのです。これを見に来る人も多勢いました。 長者が言いました。「私の牛は…
巻4第32話 震旦国王前阿竭陀薬来語 第卅二 今は昔、震旦(中国)に皇子がありました。容姿が端正で美しい心をもっていました。父王はこの皇子をたいへんに愛していました。 やがて、皇子は重い病を得て床につき、数か月が経ちました。国王はこれを歎き、天に…
このプロジェクトは独自ドメインを取得しオリジナルのウェブページでサービスを展開するのがもっとも適当だと考えています。やがては電子書籍の形で誰でも入手可能なかたちをとります。 とはいえ、ボランティアで運営している悲しさか、資金的にはまったくプ…
あなたが華族の血筋なら別ですが、そうでないかぎり墓は100年もちません。あなたの周囲に100年以上残ってる墓がありますか? ほとんどないはずだし、あっても誰が入ってるかわからないはずです。 つまり、墓というモニュメントは、あなたの人生を、存在を、…
巻5第11話 五百人商人通山餓水語 第十一 今は昔、天竺に五百人の商人があり、商用で他国に行く途中にある山を通りました。かれらは一人の沙弥(しゃみ、年少の僧)を連れていました。 間違った方向に足をすすめ、山深い場所に迷い込んでしまいました。そ…
巻4第31話 天竺国王服乳成嗔擬殺耆婆語 第卅一 今は昔、インドに国王がありました。心はねじ曲がっていたし、いつもうとうとして、眠ってばかりいました。まるで寝ることが仕事のようでした。 こんな人はそうはいません。大臣や公卿は「これは病だ。だから終…
巻4第30話 天竺婆羅門貫死人頭売語 第三十 今は昔、天竺に一人のバラモンがありました。多くのドクロをヒモでつないで持ち歩き、王城に入って大声で叫びます。「おれは死人のたくさんのドクロ貫いて持って歩いている。このドクロを買う人はいないか」こう叫…
巻7第2話 唐高宗代書生書写大般若経語 第二 (巻七第二話 閻魔大王の裁きを待つ書記生の右手が写経の功徳で大光明を放ち、蘇生を許された話) 今は昔、震旦の唐の高宗の治世、乾封元年に、ひとりの書生がおりました。重病にかかってたちまち絶命しましたが、…
巻4第29話 天竺山人見入定人語 第廿九 今は昔、天竺に山がありました。かぎりなく峻厳でした。 釈尊が入滅したのちのある日のことです。その山が落雷によって崩れました。崩れた山に入ると、ひとりの比丘(僧侶)がおりました。身体は枯れ乾き、目をつぶって…
芥川初期の代表作『鼻』『芋粥』『羅生門』は『今昔物語集』に材をとっている。 『羅生門』は黒澤明が映画にし、ヴェネツィア国際映画祭金獅子賞、アカデミー賞特別賞を受賞した。「世界のクロサワ」と呼ばれるようになったのはこの後だ。 ……と、ウンチクを…
巻4第28話 天竺白檀観音現身語 第廿八 今は昔、釈迦が涅槃に入った後のことです。摩訶陀(まがだ)国に伽藍がありました。名を□□寺といいます。その寺の堂に、白檀(びゃくだん)の観音菩薩の像がありました。 たいへん霊験あらたかで、常に数十人の人が詣で…
今昔物語集 巻四 護法清弁二菩薩空有諍語 第廿七 今は昔、天竺の摩訶陀(まがだ)国に、護法菩薩という聖人がありました。世親菩薩の弟子です。教法をひろめ、智恵甚深なることで、人に勝っていました。その門徒も多くありました。 同じころ、清弁菩薩という…
今昔物語集 巻5第13話 三獣行菩薩道兎焼身語 第十三 今は昔、天竺に兎・狐・猿、三匹の獣がいました。彼らは誠の心を起こして菩薩の修行をしていました。「わたしたちは前世に深く重い罪を負い、賤しい獣として生を受けた。これは前世に生きとし生ける者をあ…
今昔物語集 巻7第1話 唐玄宗初供養大般若経語 第一 今は昔、震旦は唐の玄宗(正しくは高宗)皇帝の御代に、玄奘三蔵が『大般若経』の翻訳に取りかかりました。玉華寺という大伽藍にこもり、梵語から漢語に訳したものを寂照や慶賀らその寺の高僧に筆記しても…
今昔物語集 巻4第26話 無着世親二菩薩伝法語 第廿六 今は昔、仏滅後九百年のころ、中天竺の阿輸遮国というところに、無着菩薩という聖人がいらっしゃいました。智恵甚深、弘誓広大でした。夜は兜率天に昇って弥勒の御許で大乗の法を学び、昼は閻浮堤(人間界…
今昔物語集巻4第25話 龍樹提婆二菩薩伝法語 第廿五 今は昔、西天竺に竜樹菩薩という聖人がいらっしゃいました。智恵は無量、慈悲は広大でありました。また、そのころ中天竺に提婆菩薩という方がいらっしゃいました。この人もさとりが深く、法を広めたいとい…
今昔物語集巻四 竜樹、俗の時、穏形を作る語、第廿四 今は昔、竜樹菩薩という聖人がありました。智恵は無量、慈悲は広大な方です。俗に在ったときは、外道(仏教以外の教)の典籍を学んでいました。そのころ、二人と示し合わせて穏形の(透明人間になる)薬…
●お仕事 現在、 【翻訳】【校正】【協力】【解説】と4つのポジションを用意しています。どの関わり方をして下さっても、クレジットはいたします。 ただし、【解説】は【翻訳】とセットです。【解説】のみの希望は受けつけておりません。【協力】とは経済的…
【原文】 巻5第1話 僧迦羅五百人商人共至羅刹国語 第一 [やたがらすナビ] 【翻訳】草野真一 【校正】草野真一 【協力】草野真一 【解説】 草野真一 この話は釈迦の本生譚(前世の物語)のひとつとされていて、ジャータカ(本生譚を集めたもの)にも記載があ…