巻5第1話 クレジット
【原文】
巻5第1話 僧迦羅五百人商人共至羅刹国語 第一 [やたがらすナビ]
【翻訳】
草野真一
【校正】
草野真一
【協力】
草野真一
【解説】
草野真一
この話は釈迦の本生譚(前世の物語)のひとつとされていて、ジャータカ(本生譚を集めたもの)にも記載がある。わかりやすくいえば、この話で大活躍している僧迦羅とは、前世の釈迦だというわけだ。
「美人しかいない、年寄りもブスもいない島で、働きもせずのんびり暮らせたらサイコーだよな~。しかも美女は俺のことが大好きなんだ」というのはオトコの妄想で、この妄想は1000年前にも賛同を得られるまさに普遍的なものだってことがわかる。井原西鶴の『好色一代男』も美女ばっかりの島への船出で終わってるそうだ。
じつはその美女は鬼(羅刹)だよ、という話も、要するに「世の中そうそううまくいかないよ」と語ってるわけである。
ただし、これだけ幸福だと、正体が鬼だって取って食われたっていいじゃん、と考えるやつがいそうだ。実を言うと私もそうだ。そういう人のために、この話は「幸福なのははじめだけだよ、いずれ足の腱を切られて歩けなくされて監禁されるんだよ」とシビアな状況がつきものであることを述べている。
この物語が重要なのは、現代に続く物語であることだろう。
僧迦羅とはシンガラすなわちシンハラであり、羅刹国とはセイロン島(現在のスリランカ)であることもわかっている。すなわち、この話は「スリランカ建国秘話」なのだ。
シンハラ人とタミル人との間に長く紛争が続き、血が流れ続けたこととこの話はまったく無縁ではない。
その長き紛争にたいする外務省の解説は以下。
出典は、大唐西域記巻第十一。宇治拾遺物語巻六は本話と一致。
【参考】
「異界の島への航海神話としての『御曹司島渡』」松村一男 (和光大学)